特定整備認証を取得しましたか?
国交省のHPによりますと、自動車特定整備制度は、従来からの分解整備に加え、自動ブレーキなどに使用される前方を監視するカメラやレーダーなどの調整や自動運行装置の整備について、「電子制御装置整備」と位置づけ、その整備に必要な事業場(電子制御装置点検整備作業場)や従業員、工具(整備用スキャンツール等)などの要件を定めています。
特定整備認証制度が2021年4月に始まって2023年4月で3年が過ぎました。現在は経過処置により従来の作業を継続することができますが、タイムリミットまではもうすぐです。
2024年4月からは、未認証の業者さんは、特定整備対象車両の電子制御装置の調整や、それらが装備されている部位(フロントガラスやフロントバンパーなど)の交換作業も認証がなければできなくなります。
2023年3月現在、約90,000の整備認証工場の中で、未だ半数以上の工場が特定整備認証を取得されていないそうです。駆け込みで2023年末あたりでは、多くの申請が予想されていますので早めに取得されるようにしてください。
特定整備認証には、スキャンツールなどの設備や、作業場の登録、資格者の在籍などの条件がありますので、準備が必要になります。
※参照 国交省HP
自動車特定整備事業についてはこちらから→
特定整備対象車種はこちらから→
最重要なのは整備要領書(FAINES)の確認
岡山エーミングセンターでは、整備要領書の確認が最も重要だと思っています。
せっかく特定整備認証を取得されても、実際大半の方はエーミングを自社で実施されていないんではないでしょうか?うちはディーラーやガラス業者さんに外注するから大丈夫なんて声を、私の周りからも聞こえてきます。
本当に大丈夫?
岡山エーミングセンターのページでも詳しく書いていますが、ADAS(先進ドライバーアシストシステム)では、エーミングが正確になされていないと、緊急時に正しく作動せず、自動ブレーキが作動しなかったり、逆に必要のない場面で作動して急ブレーキを踏んだりと、大変危険な状況になりかねません。
そもそも、エーミングが必要な作業かどうか整備要領書を確認しないとわかりませんよね?全車種全項目を覚えてらっしゃったら別ですけど、そんな方はいらっしゃらないと思います。
年々進化している新型車にもついていけていますか?
エーミングは特定整備の項目だけではありません。バンパーについているソナーや、最近増えている360度モニター、ブラインドスポットモニター(BSM)についても確認が必要だったり調整が必要だったりします。フロントガラスの脱着時だけではありませんよ。
整備のプロである私たちが、先ずは知識のアップグレードをし、わからなければとことん調べることが大切です。
わからないからやっていない。チェックランプが点灯していないからやっていない。DTCが残っていないからやらない。そもそも必要な作業だと知らない。こんなことでは、お客様の安全を本当にお守りできるのでしょうか?
岡山エーミングセンターでは、相当な車種と種類のエーミングを実施してきましたが、1台1台整備要領書を確認して正確なエーミングを実施しています。
ちなみに、エーミングデーター集などの書籍や、あらかじめスキャンツールに掲載されているデータも、FAINESで確認するようにしています。万が一誤記載があったら大変ですから…
皆様もメーカーの整備要領書を確認するクセをつけてくださいね。
FAINESの閲覧は、メーカーごとにコツが必要です。
FAINESで調べるときに、どこを見たらいいのかわからないって質問をよくいただきます。
メーカーごとに整備要領書の様式が異なり、必要な情報にたどり着くまでに数時間以上かかることも…。ややこしいですよね。私もいまだに右往左往して探しています。
何回か、ファイネス研修を受講し、記載個所を再度調べての繰り返しです。
一例ですが、私が閲覧で行っている「コツ」をお話していきたいと思います。
トヨタ車の整備要領書検索のコツ
トヨタの整備要領書は、比較的簡単にたどり着けることが多いです。
大抵は、左端にある総説から下のサービスデータ→設定項目一覧→部品交換・脱着時→作業一覧で検索しています。
ミリ波レーダ・ウルトラソニックセンサ・ブラインドスポットモニタ・パノラミックビューなど
ホンダ車の整備要領書検索のコツ
先ずは右上の車両選択で、フレームナンバーをしっかり確認すること。
車種にもよると思いますが、運転支援、SRSエアバック、シートベルト
→速度/車体制御
→アダプティブクルーズコントロール(ACC)/IHCC/LKAS
上記の項目で運転支援システムの検索が可能です。
ダイハツ車の整備要領書検索のコツ
プリクラッシュセフティシステム[スマートアシスト]の項目で検索できます。
特筆しておきたいのは、作業整備上の注意事項で、次のことを厳守する。厳守しない(中略)思わぬ事故につながり、重大な障害に及ぶか、最悪の場合脂肪につながる恐れがあるとまで記載されています。
フロントガラスにフィルムを貼るなとか、20項目以上の記載があります。
しっかり注意事項を遵守して整備にあたってください。
※ウルトラソニックセンサのソナーエリア検査はリヤだけかフロントも必要かしっかり確認しましょう。
スズキ車の整備要領書のコツ
目次:コントロールシステム→運転支援システムで検索できます。
特に確認してほしいのは、デュアルカメラブレーキサポートの注意事項
【軽衝突でもステレオカメラの軸ずれが発生する可能性があるため、DCBS作動表示灯が点灯又はインフォメーションディスプレイに“一時機能停止中”を表示していなくても、ステレオカメラのエーミング調整を行う。】の項目です。
「軽衝突」の衝撃の大きさの判断基準は明確ではありませんが、軽衝突の損傷個所の記載はありません。つまりフロントガラスを脱着していなくても、後ろからや、側面からの損傷でもエーミングが必要な場合があると読み解かれます。皆さんは「軽衝突時」に実際にエーミングされていますか?軸ズレが起こっていたら誤作動の原因になるかもしれません。当社では確実に実施をしています。
その他の検索のコツ
キーワードで検索することも多いかと思います。
多くのメーカーはエーミングで検索していますが、ホンダの整備要領書は「エイミング」で検索してください。
また、バンパーは、「バンパ」。センサーは「センサ」で検索すると抽出できる場合が多いです。
メーカーによって、名称が異なりますので、わからない場合はメーカーのHPでADASの名称を調べたりして乗り切っています。
岡山エーミングセンターでも、もちろん全部を網羅しているわけではありませんから、業者さんから質問があれば、一緒に探して情報を共有したり、あいおいニッセイ同和損保さんの次世代せいび研究会さんに質問したり。疑問に思うことはその都度解決していくようにしています。
整備要領書に書いてある押さえておきたいポイント
エーミングが必要な例をまとめてみました。(整備工場向けの記事です)でもご紹介していますが、目見落としやすいエーミングが必要となる事項を押さえておきましょう。
軽衝突でも…
3.4でご説明しましたが、スズキ車とスバル車のデュアルカメラやアイサイトでは、軽衝突でも軸ズレが起こる事があるのでエーミングが必要と記載があるものがおおいです。フロントガラスを脱着していない修理車でも、前方はもちろん、側方や後方の損害でも軽衝突以上の損害で当社はエーミングを行っています。また、スズキ車のBSMなどにもこの記載がある場合があるので注意しましょう。
リヤバンパ交換でBSMエーミング
マツダ車のリヤバンパ交換作業では、BSMのエーミングが必要になります。整備要領書には、新品のバンパでも個体により取付や塗膜の厚さが異なるのでエーミングが必要と記載されています。
リヤバンパを補修塗装しただけでも、塗膜の厚さが変更するので、エーミングが必要と理解しています。
コネクティッドシステムをOFFにする
岡山エーミングセンターで実際にあった話ですが、元受けさんでコネクティッドの通信を切らないで作業されたお車。ご依頼でミリ波レーダエーミングをさせていただいた案件。
その後メーカーから販売ディーラーさんに報告がありディーラーさんよりお客様に連絡。再点検しましょうと提案されたそうです。
お客様はディーラーに行きミリ波レーダのずれ量を計測されました。結果、規定値には入っていたものの、誤差が発生したためやり直されたと連絡がありました。
岡山エーミングセンターでは、もちろん整備記録簿も発行しているのでそのディーラーさんに確認のため問い合わせしました。
ディーラーさんの測定方法を聞くと、メジャーで基準の高さを目視で測りターゲットを設置し誤差が出たとのこと。岡山エーミングセンターでは、個車ごとに高さが微妙に異なるため、基準値ではなく整備要領書に従いエンブレム中心高さにレーダー墨出し機を使用してターゲットの高さ設定をしより正確なエーミングを実施した旨を伝えました。
結局ディーラーさんからお客様に詳細を伝えていただく事で解決しましたが、このような事例もあるので、整備要領書に従って作業時にはコネクティッドの通信を切る事をお勧めします。
安全な修理は私たちの責任です。
私たち整備工場は、自分の会社を信頼して選んで頂いたお客様に、安全な整備をご提供し続けなければなりません。エーミング作業はお客様の安全に直結する大変重要な作業のひとつです。
エーミングを始める際に、車種や型式・年式を調べ、整備要領書を確認することは当然ながら必須です。どんな装置が搭載されていて、どのようにエーミングの前提条件や作業の方法が事細かに記載されていますので、注意事項を含め熟読してから作業にあたってください。
ぜひ共に学び、安心安全な整備を実施できるよう情報交換をいたしましょう。
次回は、エーミングの種類と必要な設備について書こうと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。